ネット上の育児フォーラムで根強く囁かれている言説に、「ずりばいやハイハイを十分に経験させないと体幹が弱くなる」「ハイハイを飛ばすと将来の運動神経や学習能力に悪影響を及ぼす」というものがあります。しかし、発育医学の研究や臨床観察において、ハイハイ飛ばす真相は全く異なる解釈がなされています。
かつての日本家屋に多かった畳敷きの広い部屋から、現代のフローリングや家具がコンパクトに配置された住環境へと変化したことで、赤ちゃんが腹這いで長距離を移動する必然性が薄れ、近くにあるソファーやテーブルに手をかけて直接「つかまり立ち」へ移行するケースが増加しています。移動手段の獲得順序には多様性があり、ずりばいからハイハイを経ずにつかまり立ちや歩行へ進んだとしても、その後の運動能力や知的能力に決定的な障害をもたらすという医学的根拠はありません。
また、ずりばいやハイハイを一切行わず、お座りの状態のままお尻を器用に滑らせて移動するシャフリングベビー特徴(いざりっこ)を持つ子どもたちも一定数(乳児全体の数パーセント程度)存在します。シャフリングベビーには次のような共通した特徴が見られます。
- うつぶせ姿勢を嫌がり、仰向けやお座りの姿勢を好む
- 抱っこされた際に足を踏ん張らず、足を折りたたむような仕草を見せる
- 下肢の関節や筋肉が柔軟で、筋緊張がやや低めである
- 知的な発達や手の細かな操作(手先の発達)は完全に月齢相応である
小児神経専門医の臨床データによると、シャフリングベビーの多くは自立歩行の開始が1歳半から2歳前後と平均より遅くなる傾向があるものの、最終的には全員がしっかりと自立歩行を獲得し、就学期以降の運動機能にも問題を残さないことが確認されています。ハイハイの有無や移動フォームの差異は、その子の個性的な移動スタイルに過ぎず、過度な悲観は不要です。