なぜお金に困ると外見の細部まで目が行き届かなくなるのか。そのメカニズムを行動経済学の視点から解き明かしたのが、ノーベル賞受賞者であるダニエル・カーネマンらの研究だ。彼らは、金銭的な不安が人の脳内にある認知機能のスペース、すなわち「認知の帯域幅(キャパシティ)」を膨大に消費してしまう現象を指摘した。
明日の支払いや生活費の繰り変えに追われている時、人間の脳は常に満杯状態になる。結果として、服にアイロンをかける、靴を磨く、髪型を整えるといった後回しにできるタスクへの注意力が著しく低下する。画面が割れたままのスマートフォンを使い続けたり、サイズが合わない衣服を着続けたりするのは、本人のだらしなさではなく、脳の帯域幅が限界を迎えているサインに他ならない。