本作の唯一無二の雰囲気を形作っているのが、緻密に計算された音響設計だ。制作を主導したクリス・モーリスは、スタジオの暗闇の中で何時間も音の配置にこだわり続けたとされる。当時のスタッフの証言によれば、彼は言葉のイントネーションや沈黙のコンマ何秒単位の長さにまで異常な執着を見せたという。
劇中に使用されたBGMには、Warp Recordsに代表されるエレクトロニカや、Brian Enoなどの環境音楽が贅沢にフィーチャーされていた。台詞と音楽が境界なく溶け合う革新的な音響空間は、まさにアンビエント・ラジオドラマと呼ばれるにふさわしい仕上がりであり、放送事故と見紛うような長い静寂すらも緻密な計算のもとに演出されていたのだ。