運動単位を理解する上で外せない客観的指標が、1本のアルファ運動ニューロンが何本の筋線維を支配しているかを示す「運動単位神経支配比」です。この比率は全身の筋肉で決して一様ではなく、部位に求められる役割に応じて極端な開きが存在します。
人間の身体の中で最も神経支配比が小さい部位の一つが、眼球の向きをミリ単位以下でコントロールする外眼筋です。神経1本に対して筋線維はわずか5〜10本程度しかぶら下がっていません。ピアノの鍵盤を叩く手内筋や喉の声を調節する喉頭筋も、1本の神経が担当する筋線維数は数十本レベルにとどまります。1つの運動単位が担当する筋線維が少ないほど、出力の最小ステップが小さくなるため、極めて精密な運動のグラデーションを描くことができます。
対照的に、体重を支えて歩行や跳躍を担う大腿四頭筋や腓腹筋(ふくらはぎ)では、1本の運動ニューロンが1,000〜2,000本以上の筋線維を一手に引き受けています。スイッチが1つ入るだけで数千本の筋線維が一斉に収縮するため、繊細なコントロールには不向きな反面、一瞬で強大なトルクを立ち上げることが可能です。身体の構造は、精密性と絶対出力のトレードオフを神経支配比の設計によって見事に解決しています。