空輸ネットワークが高度化した現代において、なぜこれらの果実は大都市圏の青果売り場から姿を消したままなのでしょうか。その背景には、熱帯果実特有の生理生態と、長距離コールドチェーンとの根本的な相性の悪さがあります。
第一の壁は、「予測不可能な追熟スピードと日持ちの短さ」です。アテモヤやカニステルは樹上では完熟せず、硬い未熟果の状態で収穫した後に数日から十数日かけて常温追熟させます。ところが、適切な温度(20〜25℃前後)を外れて冷蔵保存されると「低温障害」を起こして追熟が永久に停止し、硬くてエグみのあるまま腐敗してしまいます。逆に気温が高い夏場では一気に発酵が進み、皮が黒変して崩れてしまうため、店頭で「今日が食べ頃」という状態を2日と維持できません。
第二の障壁が、「栽培の小規模性と自然災害リスク」です。本土で安定供給される果物と異なり、珍しい熱帯果実の多くはやんばる(本島北部)や南部地域の小規模農家による庭先栽培や混植が中心です。台風の直撃を一度受けると樹木全体が塩害や強風で壊滅的な打撃を受け、年間出荷量が数分の一に激減するケースも珍しくありません。
さらに島バナナをはじめとする一部品目は栽培管理が繊細で、病害虫(バナナモザイク病など)の影響を受けやすく、大量一括出荷が構造的に成立しないという農業経済上の事情が横たわっています。