特攻の不条理を語る上で欠かせない存在が、陸軍飛行第62戦隊の佐々木友次伍長だ。彼は特攻出撃を命じられながらも、爆弾を敵艦に命中させて帰還せよという航空兵本来の職分を全うし、実に9回にわたって出撃し、そのすべてから生還を果たした。
「死んで神鷲になるより、生きて敵を撃沈する」。佐々木友次の行動は、軍命への盲従が絶対視された当時において異例の反骨精神だった。上官から「なぜ死なずに帰ってきた」と激しく詰問され、戦死者としてすでに公表されていたために存在自体を疎まれながらも、彼は合理的な操縦判断と冷静な戦局把握を捨てなかった。彼の生き様は、無謀な精神主義が支配した戦場において、真のプロフェッショナリズムとは何か、そして命を賭して守るべき価値とは何かを痛烈に示している。