三郎丸蒸留所の現在を語る上で欠かせないのが、若鶴酒造の取締役社長でありマスターブレンダーを務める稲垣貴彦氏の存在です。若鶴酒造は戦後の米不足の中、1952年にウイスキー製造免許を取得し「サンシャインウイスキー」を生み出しましたが、昭和末期から平成にかけてのウイスキー需要低迷とともに設備は老朽化し、一時は操業停止寸前の危機に瀕していました。
大手IT企業での勤務を経て家業に戻った稲垣氏は、先人たちが残したウイスキー造りの歴史と眠っていた古樽の価値を再認識し、蒸留所の抜本的な再建を決意します。そこで打って出たのが、2016年末に実施されたクラウドファンディングでした。目標金額2,500万円に対し、最終的に460人を超える支援者から約3,800万円もの資金が集まり、2017年の劇的なリニューアルオープンへと結実したのです。
当時のインタビューや手記において、稲垣氏は「単なる設備の改修ではなく、北陸の風土と富山の職人技を詰め込んだ、世界に通用するウイスキー造りの原点を創り直す戦いだった」と振り返っています。支援者とともに歩むコミュニティ形成と、透明性の高い情報発信姿勢は、いまも三郎丸ファンコミュニティの強固な信頼基盤となっています。