淹れ方と同じく重要なのが道具選びだ。職人が丹精込めて焼き上げる伝統工芸(常滑焼急須・萬古焼)の急須は、単なる抽出容器を超えた化学的役割を果たしている。これらの急須に使われる赤土に含まれる酸化鉄が、お茶のタンニンや余分な渋み成分と穏やかに反応し、口当たりを驚くほどまろやかに整えてくれる。
NHK『美の壺』でも度々特集されるように、吸水性と通気性を兼ね備えた無釉(うわぐすりをかけない)の陶器急須は、使い込むほどにお茶の香気を吸い込み、道具そのものが育っていく。急須の内側にある精緻なセラメッシュ(陶製茶こし)を通すことで、金気臭さを一切排した純粋な茶の香味が喉を潤す。