世界中で愛され、日本でも国民食レベルの支持を集めるイタリア料理が入らない理由には、イタリアという国家の成り立ちが深く関わっています。
現在知られるイタリア料理(トスカーナ料理、シチリア料理、ボロネーゼなど)は、本来「地方色豊かな家庭料理や郷土料理(クチーナ・ポポラーレ)」の集合体です。イタリアが一つの近代統一国家となったのは1861年と歴史的に新しく、それまではヴェネツィア共和国、フィレンツェ、ナポリ王国など独立した都市国家に分かれていました。
そのため、ヴェルサイユやトプカプのような「巨大帝国の中央集権的な宮廷料理体系」が存在せず、19世紀末の美食家たちが定義した三大料理の選定枠組みからは外れることとなりました。素材の味をシンプルに活かす家庭的な温かさこそがイタリア料理の真骨頂であり、宮廷的な重厚さを競う土俵とは方向性が異なっていたのです。