築地玉寿司を語る上で絶対に外せない歴史的イノベーションが、昭和46年(1971年)に誕生した「元祖末広手巻」である。当時、寿司はカウンターで一握りずつ食べる高級品という固定観念が強かったが、末広がりのおめでたい三角形にパリッとした海苔を巻くスタイルを発明したことで、誰もが手軽に本格的な寿司を楽しめる時代を切り開いた。
そして通なリピーターが密かに愉しんでいるのが、メニュー表の隅に隠された逸品や、気さくな寿司職人との会話から生まれる裏メニューだ。たとえば、その日に仕入れた白身魚の端肉を特製の胡麻醤油で和えた小鉢や、直火でサッと炙ったエンガワに塩とカボスを振った限定の握りなど、職人の遊び心とセンスが光る皿は、一度味わえば病みつきになること間違いない。