名手・尾崎将也による脚本の妙味は、戦争の傷跡という重厚な歴史的背景を扱いながらも、作品全体に軽妙なユーモアと生命力を吹き込んだ点にある。単なる成功譚ではなく、地域に根ざした「町医者」の日常に光を当てた医療ヒューマンドラマとしての完成度は群を抜いている。
大病院での権威主義的な医療とは対照的に、患者の生活そのものに寄り添う梅子の姿勢。それは、効率や数値化が偏重されがちな現代の地域包括ケアの理念を先取りしていたとも言える。尾崎が紡いだ台詞の数々は、10年以上の歳月を経てもなお、生きることの根源的な喜びを静かに問いかけてくる。