この特異な美意識の源流を辿ると、室町時代の能楽と、江戸後期の浮世絵という二大文化潮流に突き当たる。能面師たちが彫り上げた「白般若(気品ある貴婦人の狂気)」「赤般若(激情に狂う中流女性)」「黒般若(完全に鬼となった下層の怪異)」という精緻な階層構造を、江戸の絵師たちは大衆のエネルギーと融合させた。
とりわけ幕末の鬼才・歌川国芳が見せたダイナミックな武者絵や妖怪画の構図は、現代の和彫りの骨格を決定づけた。浮世絵が持つ大胆な遠近法と細密な筋彫りの技術は、木版から生身の人肌へとキャンバスを変え、名もなき職人たちの手で独自の伝統工芸へと昇華されていったのである。