かつては敷居の高さの象徴であった高級料亭も、昼の時間帯をフックにした柔軟なアプローチで新たなファンを獲得している。夜には数万円を下らない本格的な日本料理や会席料理が、ランチタイムであれば手が届きやすい御膳スタイルで提供されるケースが増加した。
ミシュランガイドで星を獲得するような名店でさえ、ランチタイムの座敷席を活用したカジュアルな試みに乗り出している。辻調グループ代表の辻芳樹氏が長年提唱してきた「日本の食文化の神髄は、空間・器・季節感が織りなす総合芸術にある」という哲学は、現代の座敷ランチの現場にも色濃く息づいている。畳の上で漆器に触れ、季節の移ろいを五感で愛でる行為は、ファストな日常に対する最高のアンチテーゼといえる。