かつて不妊治療は、暗中模索の領域だった。1978年、イギリスの生理学者ロバート・G・エドワーズ博士らの尽力によって世界初の体外受精 (IVF) 児が誕生し、生殖医学は劇的なブレークスルーを迎えた。博士はその功績により2010年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。
半世紀近くを経て、現在ではテクノロジーの進化が治療の裾野を大きく広げている。スマートフォンと連動したバイタル計測デバイスや、排卵予測アルゴリズムをはじめとするフェムテック市場の拡大により、個人が日常の中でホルモン動態や体調の変化を緻密にトラッキングできるようになった。かつては専門病院の門を叩かなければ得られなかった高度な生体データが、今や手のひらの上で可視化されている。