庄野真代の人生における最大の試練の一つが、50代を目前にした時期に直面した乳がんの宣告でした。自著や当時の特別インタビューでの告白によると、セルフチェックでの違和感を契機に受診したところ、悪性腫瘍が見つかり、即座に手術と長期にわたる治療が必要と診断されました。
「歌手として声が出なくなるのではないか」「再び人前に立てる日が来るのだろうか」という計り知れない恐怖と闘いながら、彼女は温存手術およびその後のホルモン療法や放射線治療に臨みました。副作用による倦怠感や体調の急変に苦しみながらも、彼女を支え続けたのは「もう一度自分の言葉と歌で誰かを励ましたい」という強烈な表現者としての本能でした。
この大病の克服体験は、彼女の死生観と音楽観を劇的に変化させました。「生かされた命を社会のためにどう使うか」という強い想いが、後のNPO活動や地域支援活動の原動力となっています。公の場で見せる彼女の柔らかくも力強い笑顔の奥には、死の淵を見つめた者だけが持つ揺るぎない覚悟が刻まれています。