国立天文台が発表する正確な天体暦は、月という天体が描く複雑な力学を鮮やかに証明している。月が地球の周りを描く公転軌道は完璧な円ではなく、わずかにつぶれた楕円形だ。地球と月の距離は一定ではなく、月が地球に近づく近地点付近を通過するときは速度が上がり、遠く離れる遠地点では速度が落ちる。
天文学の視点から見ると、この速度変化こそが十五夜と満月のタイミングを狂わせる主因である。月が地球から遠い領域で満ちていく過程にあると、満月を迎えるまでに時間がかかり、15日目の夜を過ぎて16日目や17日目にずれ込む。国立天文台の観測データによれば、中秋の名月と満月が同日になる年のほうがむしろ少数派であり、数年ごとに一致しては再び離れていく周期を繰り返している。
夜空に浮かぶ月の姿がわずかに欠けていようとも、肉眼でその微細な違いを見分けることは至難の業だ。むしろ完全な満月の一歩手前にある月に風情を見出す感覚こそ、古来の日本人が育んできた美意識の真骨頂といえるだろう。