沼津港深海水族館が一般的な大規模水族館と一線を画し、独自の地位を築いている最大の理由は、その圧倒的な専門性と希少価値にあります。目玉展示であるシーラカンスは、国際希少野生動植物種(ワシントン条約第I類)に指定されており、商業取引はもちろん捕獲すら極めて厳しく制限されています。同館では、1981年に日本シーラカンス学術調査隊が現地調査で捕獲した貴重な個体を正式な学術ルートで継承し、マイナス20度の特殊冷凍展示室で2体、精巧な剥製で3体を展示しています。冷凍保存された本物のシーラカンスを間近で観察できる施設は、世界中を探してもここ沼津にしか存在しません。
さらに、目の前に広がる駿河湾は、岸からわずか数百メートル進むだけで急激に深くなる世界有数の深海フィールドです。地元の底引き網漁師と長年培ってきた独自のネットワークと信頼関係により、傷つきやすい深海生物を生きたまま迅速に搬送・収容する体制が確立されています。光の届かない漆黒の世界で生きる生物たちの発光現象や、過酷な高圧環境に適応したグロテスクかつ機能美に満ちた造形を、驚くほど近い距離で観察できる点が、幅広い層の知的好奇心を刺激しています。
特に来館者の視線を集めるのが、愛くるしいフォルムのメンダコと、威圧感のある鎧をまとったダイオウグソクムシです。メンダコは非常に繊細な生態を持ち、光や水質変化に弱いため長期飼育が極めて困難な生物として知られています。同館の飼育スタッフによる昼夜を分かたぬ水質管理と遮光環境の維持によって、期間限定展示を含め貴重な生きた姿が公開されており、その姿を一目見ようとファンが後を絶ちません。