近代化が進む大通りの背後で、古書店主たちの間だけで語り継がれてきた知られざる歴史がある。かつて震災や戦災を生き延びた貴重な古典籍は、店主たちが命がけで地下壕や頑丈な蔵へと運び込み、灰燼に帰すのを防いだという。こうした古書店の地下深くに眠るアーカイブには、公の図書館すら把握していない未整理の肉筆原稿や幻の草稿が、今もひっそりと眠っている。
そして、神保町のもうひとつの顔が「カレーの聖地」である。古書を片手にスプーン一本で食べられることから定着したとされるカレー文化だが、名店を巡るにはちょっとしたコツがいる。
靖国通りの大行列を避け、すずらん通りの雑居ビル奥深くに潜む老舗欧風カレー店からスタートしよう。バターライスと濃厚なルーが織りなすコクを堪能した後は、路地裏の雑居ビル2階にあるスパイス系カレーの名店へ。クローブとカルダモンが鮮烈に香るスープ状のルーを味わい、最後は駿河台方面の喫茶店で深煎りネルドリップを啜る。本で頭を使い、スパイスで五感を覚醒させる。これこそが通だけが知る神保町の完全没入ルートだ。