ザ・タイガースの後期、脱退したメンバーに代わって加入したのが、実弟の岸部四郎(後の岸部シロー)だった。兄弟で同じステージに立ち、新たなサウンドを模索したものの、ブームの終焉とともにバンドは1971年に解散。その後、沢田研二らと結成したロックバンド「PYG」でも激しい時代の逆風に晒される。
GSの残党としてロックファンからステージにトマトや空き缶を投げつけられる屈辱。音楽業界の潮流がフォークやニューミュージックへと移り変わる中、岸部は次第に演奏の場を失っていった。仕事はなく、収入も途絶え、家族を養うために奔走する日々。華やかなスポットライトを浴びた20代前半から一転、人生の暗渠に落ちた男は、30歳を前にして途方に暮れていた。