長年にわたりこの施設で最も物議を醸してきた展示物といえば、かつてタイ全土を震撼させた連続殺人犯、シーウィー(Si Quey)のミイラ化された遺体だった。1950年代に幼い子どもたちを次々と襲い、その心臓や肝臓を喰らったとされた人物だ。彼の遺体は犯罪抑止と病理研究の目的で特殊な樹脂加工を施され、ガラスケースの中で数十年にわたり立ち姿のまま晒され続けた。
この戦慄のストーリーは映画化され、映画『食人魔 シーウイ』として国民的な恐怖体験となり、博物館の知名度を飛躍的に高めた。しかし、近代に入ると人権団体や研究者の間で「捜査過程に疑義があり、彼が冤罪だった可能性を否定できない」「遺体を展示し続けるのは人権侵害ではないか」という議論が過熱。市民運動の結実として、2026年に彼の遺体は正式に火葬され、長年の展示に終止符が打たれた。これは、教育と倫理のバランスを再定義した象徴的な出来事であり、展示の歴史的転換点として語り継がれている。