宇多田ヒカルの声を語る上で、母であり伝説的な歌手であった藤圭子の存在を外すことはできない。情念に満ちた怨歌のDNAと、幼少期からニューヨークで体得した現代的なR&Bのグルーヴ。この一見対極にある二つの要素が融合した点に、彼女のオリジナリティがある。
15歳でJ-POPシーンに彗星のごとく登場した時から、その切なさを帯びた歌声には年齢を超越した成熟が存在していた。日本語の歌詞をR&Bのリズムに乗せる革新的な手法は、日本の音楽文化そのものを塗り替えた。悲しみや孤独を抱えながらもどこか艶やかなボーカルアプローチは、脈々と受け継がれる血筋と彼女自身の美学の結実である。