意志あるところに道は開けるは誤解?リンカーン名言の真相と座右の銘活用法

意志あるところに道は開けるは誤解?リンカーン名言の真相と座右の銘活用法

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「意志あるところに道は開ける」の出処を調べると、多くの書籍やWebサイトがエイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln, 1809–1865)の名を挙げています。丸太小屋の極貧家庭に生まれ、独学で弁護士となり、数々の落選や挫折を乗り越えて大統領へと上り詰め、南北戦争を収束に導いて奴隷解放を成し遂げたリンカーン。彼の波乱万丈な生涯を思えば、この言葉ほど似合う人物は他にいないように思えます。

ところが、リンカーンの残した公式な書簡集、大統領就任演説、ゲティスバーグ演説を含むあらゆる演説原稿を照合しても、彼がこのフレーズを明確に発言・記録したという歴史的証拠は存在しません。文献史学において、この格言の元ネタは17世紀のイギリスにまで遡ります。英国の詩人・聖職者であるジョージ・ハーバート(George Herbert)が1640年に編纂した『Outlandish Proverbs』には、すでに以下のような原型が記録されていました。

「To him that will, wayes are not wanting.(意志を持つ者には、道が欠けることはない)」

その後、1820年代から1830年代にかけて英語圏の民衆の間で口語化が進み、現代と同じ「Where there is a will, there is a way」という完成されたプロバーブ(ことわざ)として定着していった経緯が文献調査によって判明しています。つまり、リンカーンが青年期から政治家として活躍していた時代には、すでに英語圏で誰もが知る一般的なことわざとして確立していたのです。

それにもかかわらず、なぜ日本をはじめ世界中で「リンカーンの名言」として広まったのでしょうか。その背景には、19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカで巻き起こった「立志伝中の英雄」を称える伝記文学の出版ブームがあります。数々の逆境を不屈の闘志で跳ね返したリンカーンの生涯を説明するキャッチコピーとして、伝記作家たちがこの古いことわざを引用した結果、いつしか「リンカーン自身の言葉」として記憶のすり替えが起きたと分析されています。

橋本 菜々子
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橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。