1976年に東京・六本木で創業した叙々苑が、なぜこれほどまでに各界のセレブリティや富裕層に愛され続けてきたのか。その背景には、創業者・新井泰道氏が打ち出した「外食産業における顧客心理の革新」があります。
かつて煙と油煙が立ち込める大衆料理のイメージが強かった焼肉を、無煙ロースターの本格導入によって「デートや商談で使えるハレの日の料理」へと昇華させた功績は極めて大きいと言えます。匂いがスーツやドレスにつかない設備設計、食後のエチケットガムやアイスクリームの無料提供など、細部に宿る心遣いは今や業界標準となりました。
社会学的に見ても、日本人の外食における「安心とステータスの担保」という心理的欲求を完璧に満たしています。徹底したプライバシー保護が徹底された空間配慮、ハープやピアノの生演奏が流れる優雅な演出は、利用客に「大切に扱われている」という強い自己肯定感を与えます。テレビ番組のロケ弁や打ち上げで叙々苑の焼肉弁当が定番となったのも、この強固なブランド価値が「贈り物や差し入れとしての絶対的な信頼」を勝ち得ている証拠です。