「おせち作りで一番やってはいけないのは、年末に疲れて正月三が日に寝込んでしまうこと」。土井善晴はそう笑って語りかける。プロが直伝する失敗しない最大の秘訣は、品数を絞り込む勇気を持つことだ。
お正月を祝う基本の「祝い肴三種」――例えば黒豆、数の子、田作り。これさえあれば、立派におせちの体裁は整う。段取りに追われてパニックになるくらいなら、一品一品と静かに向き合う時間こそを楽しみたい。
火加減を気にしすぎず、煮汁が対流する音に耳を澄ませる。家族が台所に集まって味見をし、笑顔がこぼれる。そんな時間そのものが、何よりのご馳走であり、縁起物になるのだ。