歴史を振り返れば、ケシは芸術家たちを魅了すると同時に、不穏な影を落とす象徴として描かれてきた。印象派の巨匠クロード・モネが描いた『アルジャントゥイユのひなげし』には、穏やかな光のなかで赤く咲き誇る愛らしい花々が描かれている。モネがキャンバスに収めたのは、法的に問題のない平和な観賞用ヒナゲシであり、ヨーロッパの田園風景を彩る風物詩であった。
一方で、エンターテインメント作品においては、ケシの持つ強い催眠作用や毒性が印象的に表現されてきた。不朽の名作映画『オズの魔法使い』で、ドロシーたちが真っ赤なケシの花畑に入り、強烈な香りに包まれて深い眠りに落ちてしまう有名なシーンはその典型だ。可憐な外見の中に強大な破壊力を秘めたケシの二面性は、時代を超えてクリエイターたちの創作意欲を刺激し続けている。