本作の圧倒的成功の立役者は、主人公・三田灯を演じ切った松嶋菜々子であることに疑いの余地はない。それまでの彼女が持っていた華やかで気品あふれる正統派ヒロインのパブリックイメージを完全に脱ぎ捨て、一切の感情を排した無表情な立ち振る舞いに徹した演技は圧巻の一言だった。
三田灯という強烈なキャラクターを造形するにあたり、現場では徹底した演出指導が行われたという。瞬きを極力減らし、声のトーンを一定に保ち、機械のように正確な動作を徹底する――。松嶋菜々子は撮影期間中、カメラが回っていない時間であっても役の重圧を背負い続け、痛切な過去のトラウマを抱える女性の孤独を全身で体現してみせた。帽子とダウンジャケット、そして大きなドクターズバッグという象徴的なスタイルは、彼女の心の殻そのものを表すアイコンとして視聴者の記憶に深く刻まれている。