あまりにも一方的な別居通告だった。2026年1月の現役引退会見からわずか数日後、内村航平は妻と子どもたちが待つ自宅を出て行った。置き手紙やメッセージアプリを通じたドライな通達。そこには、かつて世界中を魅了した王者の面影は微塵もなかった。
2012年に婚姻届を提出した元体操選手の内村千穂さんとの間には、2人の娘が誕生している。ロンドン、そしてリオデジャネイロオリンピックでの圧倒的な連覇の陰には、常に千穂さんの献身的なサポートがあったはずだった。しかし、競技に人生のすべてを捧げ尽くす孤高のストイシズムは、家庭という日常の空間において徐々に歪みを生んでいく。自分の肉体と感覚だけを信じ抜く求道者の論理は、いつしか家族との対話を拒絶する壁へと変貌していた。