端末のメインスイッチを切っても、スマートフォンは完全に沈黙するわけではない。第1の抜け道は、周辺に飛び交うWi-Fiルーターの識別子(BSSID)とBluetoothビーコンだ。街中を歩行中、端末がWi-Fi接続を探して発信する微弱なプローブ信号は、周囲のアクセスポイントと通信を試みる。巨大なジオロケーションデータベースと照合されれば、わずか数メートルの誤差で居場所が特定される。
第2の盲点は、気圧計や加速度センサーといったハードウェアの挙動だ。エレベーターに乗った瞬間の気圧変化、歩行のピッチ、電車の加減速パターンを解析することで、どの路線のどの区間にいるのかが高精度で推定される。これらセンサーへのアクセス権限は、多くのOSにおいて無条件でアプリに開放されているのが実情だ。
第3に、IPアドレスからの位置推定が挙げられる。モバイル通信網の基地局ルーティングや固定回線のプロバイダ情報から、おおよその市区町村レベルは常時把握されている。ハードウェアの根幹レベルで通信を維持する以上、完全な位置の隠蔽は容易ではない。