世間の評価を180度激変させた最大の転換点こそ、2019年5月にスタートした公式YouTubeチャンネル「辻ちゃんネル」の開設でした。それまでのブログという媒体は、写真数枚と短いテキストで構成されていたため、読者の想像力による「悪意ある文脈の補完」が容易に起こる構造的な欠陥を抱えていました。
しかし、動画メディアであるYouTubeは、編集の隙間にあるリアルな日常の息遣いをそのまま映し出しました。画面に現れた辻さんの姿は、世間が思い描いていた「着飾って手抜きをする元アイドル」とは真逆の存在だったのです。
化粧っ気のないすっぴん同然の顔で髪を束ね、夕方の限られた時間の中で大鍋を振るい、4人の育ち盛りの子どもたちのためにハンバーグを何十個も手ごねして焼き上げる。子どもたちの呼ぶ声に絶え間なく応じながら、散らかったリビングを片付け、洗濯機を何度も回す――。その圧倒的なマルチタスク処理能力と、疲れた顔を見せつつも子どもたちに注ぐ無条件の愛情は、多くの視聴者に強烈な衝撃を与えました。
この動画コンテンツの登場と時を同じくして起きたのが、「かつてのアンチが親になったことによる懺悔と再評価」でした。2000年代後半に20代前半の辻さんを「手抜きだ」「甘えている」と批判していた同世代や少し下の世代が、自ら結婚し、出産し、育児の過酷な現実に直面したのです。
「子どもを1人育てるだけで毎日発狂しそうなのに、辻ちゃんはあの若さで何人も産んで、批判されながら毎日ご飯を作って笑顔で育てていたのか」「自分には到底真似できない」という強烈な気づきがSNS上で一気に拡散。コメント欄には「昔は叩いていてごめんなさい。今ならあなたの凄さが痛いほど分かります」という率直な謝罪と称賛の声が溢れ返るようになりました。静止画の切り取りから動画の真実へ――。情報伝達フォーマットの進化が、10年以上に及ぶ誤解の霧を晴らした瞬間でした。