日本人の添加物に対する強い不信感の根底には、過去の歴史的な薬害や公害、そして昭和の高度経済成長期に起きた数々の食品汚染事故がある。NHKオンデマンドなどで過去の調査報道アーカイブを紐解くと、当時の粗悪な合成添加物や着色料による健康被害が社会に深いトラウマを刻んだことがよくわかる。
森永ヒ素ミルク事件やカネミ油症事件といった惨禍を経て、日本の食品安全行政は世界で最も厳格な水準へと引き上げられた。しかし、一度植え付けられた恐怖の記憶は世代を超えて受け継がれ、メディアや書籍によるセンセーショナルな添加物バッシングの温床となり続けた。
「口にするだけで寿命が縮む」「猛毒が混入している」といった煽情的な見出しは部数や視聴率を稼ぐ格好の材料となったが、その結果として残ったのは、科学的根拠のない不安と風評被害だった。現代のジャーナリズムに求められているのは、恐怖を売る言説ではなく、検証された事実と客観的なデータに基づき、冷静な判断材料を提供することである。