映画界に大きな波紋を広げた二部作体制。『室井慎次 敗れざる者』そして『室井慎次 生き続ける者』へと連なる構成は、従来の商業主義的なスピンオフとは一線を画す骨太な人間賛歌となった。派手な銃撃戦や大掛かりな爆破シーンはない。描かれたのは、秋田の寒村で里子たちと寄り添い、泥にまみれながら生きる元エリート官僚の日常だ。
興行的な成功のみを追う近年の日本映画界に対し、この二部作は「キャラクターの尊厳をどう描くか」という重い課題を突きつけた。派手なカタルシスに頼らず、沈黙とまなざしだけで観客の感情を揺さぶる。その挑戦を成立させたのは、年月を重ねて深みを増した柳葉の圧倒的なリアリズムにほかならない。