母が去った後、父・重信による徹底した英才教育と過酷なトレーニングの日々が始まった。2004年アテネオリンピックで室伏広治が世界の頂点に立った瞬間、テレビ画面の向こうで歓喜に沸く日本の片隅で、母の存在は長く公には語られなかった。
その後、NHKスペシャルの人物ドキュメンタリーをはじめとする各種特集番組において、母と離れて育った孤独な幼少期と、それをバネにして鍛え上げられた鉄人の精神構造が明かされるようになった。表舞台で輝く笑顔の裏には、母を恋しく思いながらも競技に没頭するしかなかった少年の切ない記憶が刻まれていたのだ。