世間を大きく揺るがせた市川海老蔵事件の真相とは何だったのか。西麻布の飲食店で一体何が起きたのか、トラブルの決定的な理由や相手との経緯について、当時の法廷証言や双方の供述から浮き彫りになった事実は極めて複雑でした。
事件発生直後、ワイドショーや週刊誌上では「海老蔵氏が相手の髪を引っ張ったり、灰皿にテキーラを注いで飲ませようとしたりしたことが暴発の引き金になった」というセンセーショナルな噂が駆け巡りました。いわゆる「灰皿テキーラ疑惑」です。
しかし、公判の場やその後の警察の事情聴取において、この極端な逸話の多くは客観的な裏付けを欠くものであることが判明しています。実際のトラブルの理由は、過度な泥酔状態におけるコミュニケーションの齟齬と高圧的な態度でした。当時、同席していた男性を介抱する海老蔵氏の手荒な動作(髪を引っ張る、頭を小突くなど)を見た伊藤リオン氏らが、「仲間が理不尽な扱いを受けている」と激高。海老蔵氏が放った威圧的な発言が火に油を注ぎ、凄惨な暴力へと直結したのが現場の客観的経緯でした。
相手となった伊藤リオン氏は、当時27歳。暴走族グループの元幹部として裏社会にも名前が知られた存在であり、伝統芸能の世界で頂点を極めつつあったプリンスと、歓楽街の闇に身を置くアウトローが深夜の密室で偶発的に衝突したことが、事件の決定的な構図でした。