この場所の歴史を語るうえで、巨匠・黒澤明の存在を外すことはできない。名作『七人の侍』をはじめとする一連の作品群は、広大なオープンセットと圧倒的な情熱によってここで生み出された。当時の撮影現場では、天候や光の加減を妥協なく追求するあまり、数ヶ月にわたってセットが維持されることも珍しくなかったという。
同時に、世界に誇る日本の特撮文化の礎を築いたのが円谷英二だ。特撮技術の神様と呼ばれた彼が手がけた初期の作品群は、ミニチュア造形と実写映像を見事に融合させ、当時の世界中の映像制作者に多大な衝撃を与えた。東宝スタジオは、日本における邦画黄金期の熱気とイノベーションをそのまま閉じ込めた貴重な空間なのだ。