ハリウッドをはじめとする映画産業は、古くから暗黒街の物語に強烈に魅了されてきた。フランシス・フォード・コッポラ監督の金字塔『ゴッドファーザー』は、残酷な犯罪者の素顔に家族愛と悲劇の叙事詩を重ね合わせ、世界中の観客を金縛りにした。美しく影を落とすライティング、重厚な音楽、哀愁を帯びたドン・コルレオーネの姿は、本来おぞましい暴力組織を一種の神話へと昇華させたのだ。
この流れは後年のクライム・ドラマにも受け継がれ、HBOの名作シリーズ『ザ・ソプラノズ』や、マーティン・スコセッシ監督がNetflixで発表した『アイリッシュマン』へと結実する。だが、これら一連のマフィア映画やドラマが描く世界は、本物の闇を巧みに隠蔽するフィルターとしても機能した。人々が男たちの悲哀に涙している間にも、現実の組織は裏社会で着実に資金を洗浄し続けていたのだ。