謙信が手にした本物の馬上杯は、どこに行けば対面できるのでしょうか。その正統な所蔵先は、米沢藩主として上杉家の血脈を受け継いだ山形県米沢市の上杉神社内に位置する稽照殿(けいしょうでん)です。米沢上杉神社宝物殿として知られる同館には、国宝「上杉家文書」をはじめ、直江兼続の「愛」の前立甲冑など、戦国屈指の重要文化財が厳重に保管・展示されています。
稽照殿に所蔵されている謙信愛用の馬上杯は、漆の光沢を今なお残し、華美な螺鈿(らでん)細工とは異なる、武人らしい実直な風格を放っています。隣接して展示されることがある「春日杯」と呼ばれる朱塗りの大杯とともに鑑賞すると、当時の武将が実際に両手、あるいは片手で握りしめた際の重量感と手触りが克明に伝わってきます。ガラス越しに眺めるだけでも、直径約12センチメートルの開口部が持つ圧倒的な存在感に息を呑むはずです。
展示室を訪れる旅行者の間では「思った以上に大きく、これで酒を飲めば数杯で泥酔してしまうのではないか」という驚きの声が頻繁に聞かれます。常設展示されている期間と、文化財保護のために特別展でのみ公開される時期があるため、現地へ足を運ぶ際は米沢観光コンベンション協会や上杉神社の公式サイトで事前に公開スケジュールを確認しておくのが賢明です。