この問題は、単なる個人間の離散にとどまらず、伝統芸能の興行体制そのものに直結している。歌舞伎の興行を仕切る松竹株式会社にとっても、成駒屋の看板を背負う顔である妻の離脱は大きな痛手だ。贔屓筋との信頼関係や、今後の公演におけるロビー活動など、彼女が果たしてきた実務的・象徴的役割はあまりにも大きかった。
歌舞伎界全体においても、この件は象徴的な事件として受け止められている。これまで「男社会」の理屈でまかりとおってきた梨園の慣習に対し、一人の女性が明確なNOを突きつけた形だからだ。幹部たちの間には動揺が広がっており、伝統を守るための代償があまりにも大きすぎたことを痛感させられている。