なぜこれほどまでに残虐な歌詞が紡がれたのか。歌詞を深く読み解くと、単なる相手への「嫌悪」だけでは説明がつかない、巨大すぎる愛の裏返しが見えてきます。
心理学において、愛の対極にある感情は「憎しみ」ではなく「無関心」です。相手が死んで骨になろうと、来世に生まれ変わろうと追いかけて呪い続けるという宣言は、逆説的に言えば「永遠にあなたを忘れられない」という究極の執着と愛情の告白に他なりません。中途半端な恨みであれば、関係を絶って記憶から消し去れば済む話です。しかし、相手の人生を地獄に変えてでも自分の存在を刻み込みたいと願う姿は、狂気じみた純愛の成れの果てとも解釈できます。
自分を激しく傷つけ、裏切った対象に対して湧き上がる殺意に近い憎悪。それを綺麗事のオブラートに一切包まず、人間のドロドロとした本能のままに吐き出したからこそ、『五月の蝿』は聴く者の感情を激しく揺さぶる文学的な強度を獲得しています。