前澤氏の豪邸プロジェクトが世に出てから実際の完成に至るまでには、実に10年以上の歳月が流れました。一般的な戸建て住宅であれば数ヶ月から1年程度、大規模なビル建築でも数年で竣工することを考えると、異例中の異例とも言える工期の長さです。
工事が大幅に延期された最大の理由は、建材に対する妥協なき探求にあります。特に構造や内装に使用する巨大な無垢材は、伐採後に数年間かけてじっくりと自然乾燥させる必要がありました。人工乾燥では失われてしまう木の艶や粘り、香りを守るため、木材が建材として最適な状態になるのを待つだけで年単位の時間を費やしたのです。
さらに、図面通りに機械で加工するのではなく、現場で職人が一本一本の木材の癖を見極めながら手作業で削り合わせる工法を採用。途中で前澤氏自身のインスピレーションによる設計変更や素材の再選定も行われ、ミリ単位の精度を追求し続けた結果、10年超という驚くべき建設期間となりました。この時間は、効率を最優先する現代社会において、本物の文化財を創り出すために不可欠な投資だったと言えます。