古銭市場で頻繁に交わされる誤解の筆頭が、「昭和64年の500円玉が存在し、超プレミアがついている」という言説、そして「その直後に発行された平成元年も同様に価値が高い」という連想です。しかし、貨幣史の事実を紐解くと驚くべき実態が浮かび上がります。
昭和64年は1月7日に昭和天皇が崩御されたため、わずか7日間しか存在しませんでした。造幣局はこの極めて短い期間に、1円・5円・10円・50円の4種類の硬貨のみを製造し、昭和64年銘の100円玉と500円玉は1枚も製造されませんでした。つまり、世の中に「昭和64年の500円玉」は物理的に存在しないのです。もしネットオークションなどで昭和64年の500円玉と称する品が出回っていれば、それは100%加工された変造硬貨か詐欺的出品です。
昭和64年に500円玉が作られなかった反動として、元号が改まった平成元年には新元号の通貨を全国に行き渡らせるため、造幣局のプレス機がフル稼働しました。その結果として前述の2.6億枚超という膨大な発行枚数が生まれ、希少価値が生じる余地を完全に消し去ったというのが歴史的かつ構造的な真相です。