観劇ファンや映画ファンの間でよく話題にのぼるのが、シャンデリアが落下するタイミングの違いです。実は、劇場でのミュージカル版と2004年に公開された映画版(ジョエル・シュマッカー監督)では、劇中で発生する場面が大きく異なります。
劇団四季をはじめとする舞台版では、第1幕のフィナーレで落下劇が起こります。怪人(ファントム)がクリスティーヌとラウルの愛の誓い(『All I Ask of You』)を目撃して激怒し、「行け!破滅の手を!」という呪詛の叫びとともにシャンデリアを落下させ、劇場が暗転してそのまま20分間の休憩(幕間)へと突入します。観客に強烈な衝撃と余韻を残したままインターミッションへ誘う、舞台ならではの劇的な構成です。
一方、映画版では第2幕の後半(クライマックス)にタイミングが移されています。怪人が自ら作曲した劇中劇『ドン・ファンの勝利』の上演中にクリスティーヌを舞台上から誘拐する際、劇場を大パニックに陥れて逃亡時間を稼ぐため、自らロープを断ち切ってシャンデリアを落下させ、劇場全体を大火災へと発展させます。映像作品としてのダイナミズムや物語の終盤に向けたカタルシスを高めるための映画独自のアレンジです。