家賃わずか3万9000円。中央線沿線という立地を考えれば破格の安さだが、それには明確な理由があった。築年数の古さは言わずもがな、風呂は存在せず、夏は酷暑、冬は凍える寒さ。だが、春日俊彰にとってその環境は苦苦しいものではなく、むしろ創意工夫という名の極端な節約の実験場だった。
シャワー代を浮かせるためにウェットティッシュで全身を拭き上げる。近所のコインランドリーのドライヤーで髪を乾かす。さらにはダクトから漏れ出る居酒屋の匂いをおかずに白米を頬張る。お笑い芸人として十分な収入を得るようになってからもむつみ荘を退去しなかった理由は、単なるケチにとどまらない。自身のライフスタイルに対する異常なまでの美学がそこにあったからだ。