社会構造の検証と同時に不可欠なのが、人間の無意識領域への探求である。スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学(アニマ概念)は、女性性を性別を超えた全人類共通の心的元型として捉え直す視座を与えてくれる。
ユングの理論において、女性性(アニマ)とは論理や秩序を司るロゴス(男性性)と対極をなす、直感、感情、混沌を包容する受容性、そして生命の連続性を象徴するエネルギーである。これは肉体的な性別とは切り離された、すべての人間の中に潜在する内的リソースにほかならない。日本心理学会などの研究報告においても、個人の心理的成熟には、抑圧された異性側の元型を意識化し、自我へ統合するプロセスが決定的な役割を果たすことが示唆されている。
私たちが「弱さ」として忌避してきた感受性や曖昧さを受け入れること。それこそが、分断された自己の全体性を回復する端緒となる。女性性の抑圧は、女性だけの問題ではなく、効率至上主義に蝕まれた人類全体の心理的危機なのである。