鳥取砂丘を訪れた人が足跡や木の枝を使い、砂の上に巨大なハートマークや名前、メッセージを描いてしまうケースは、毎年のように報告されています。落書きを行う人々に共通しているのは、「砂に文字を書くくらい、誰にも迷惑をかけていない」という極めて希薄な当事者意識です。
都市部のコンクリート壁や建造物にスプレーで落書きをする行為であれば、器物損壊罪にあたる明白な犯罪だと誰しもが認識します。ところが砂丘の場合、「自然の砂であり、いずれ風や雨で元通りになる」という誤った思い込みがブレーキを外してしまいます。さらに、SNSの普及以降は「巨大な文字を描いて上から撮影したい」「映える写真をタイムラインに載せたい」という自己顕示欲が加わり、行為がエスカレートしやすい土壌が生まれています。
しかし、鳥取砂丘は国の天然記念物であり、山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されたかけがえのない自然遺産です。一握りの観光客が刻んだ数メートルの文字が、後から訪れた何千人もの観光客が楽しみにしていた雄大な自然美を一瞬で台無しにしている現実に、多くの加害者は気づいていません。