記憶を語るうえで最も混同されやすいのが、「短期記憶」「長期記憶」「ワーキングメモリ(作業記憶)」の3つの概念です。心理学・脳科学の臨床現場では、これらは全く異なる機能として厳密に区別されています。
短期記憶が単なる「一時的な情報のメモ帳」であるのに対し、ワーキングメモリはそのメモ帳に書かれた数字を使って「計算し、並べ替え、意思決定を下す作業台」の役割を担います。たとえば、電話番号を口頭で復唱しながらメモ帳を探す行為は短期記憶ですが、「聞いた3つの数字を逆から並び替えて答える」といった頭脳操作にはワーキングメモリがフル稼働しています。
それぞれの機能と役割の違いを整理したのが以下のデータです。
かつて心理学者ジョージ・ミラーが提唱した「マジカルナンバー7±2」という説が有名でしたが、ミズーリ大学のネルソン・コーワン教授らによる近年の精密な追試研究では、純粋な短期記憶の容量は「4±1項目(チャンク)」程度であることが判明しています。人間の脳が一度にそのまま保持できる塊は、せいぜい3つから4つが限界なのです。