カナダ人キャラクターを語る上で外せないのが、劇中劇のスターである人気コンビテレンス&フィリップだ。彼らが画面内で繰り広げるのは、ただひたすらに放屁し、下品な言葉を連発してゲラゲラと笑い転げるだけの無内容なコントに過ぎない。
しかし、この徹底したナンセンスこそが、現実のメディア検閲に対する強烈なアンチテーゼとして機能する。1999年に公開され、世界的な大ヒットを記録した劇場版『サウスパーク/無修正映画版』では、この二人の下品な番組に影響された子供たちを巡り、アメリカ社会全体が集団ヒステリーに陥っていく様が描かれた。
親たちは自身の教育放棄棚に上げ、すべての元凶を「悪影響を及ぼすカナダ」へと擦り付ける。劇中歌『Blame Canada(カナダのせいにしろ)』に象徴される排外主義と責任転嫁の構図は、一級のブラックコメディでありながら、現代のキャンセルカルチャーや道徳パニックの本質を恐ろしいほどの精度で予見していた。