日本における怪物たちの系統を整理する上で避けて通れないのが、日本民俗学の礎を築いた巨星・柳田國男の存在だ。柳田は、人々から信仰されなくなった神々が零落し、恐れられる存在へと姿を変えたものこそが妖怪であり、その頂点に位置するのが鬼だと見抜いた。
かつて山に篭り、里の人間と異なった生活様式を持つ人々は、神聖視されると同時に異物として恐れられた。柳田の考察は、妖怪というカテゴリーのなかでも鬼が極めて政治的かつ神聖な両義性を帯びていたことを明かしている。境目を超えて侵入してくる脅威。それは荒ぶる神の姿であり、信仰を失った人間の悲劇でもあったのだ。