ファンの間で「最も泣ける最高傑作」の呼び声が高い1986年公開の『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』は、地球侵略を目論むメカトピアのロボット軍団としずかちゃんの対話劇を中心に据えた、破格のスケールを誇るSF巨編だ。制作を担ったシンエイ動画の熟練スタッフ陣による、緊張感に満ちたカット割りや光と影の演出は、今見返しても息を呑む完成度を誇る。
敵側のスパイロボットである少女型アンドロイド・リルルが、人間を奴隷と見なす冷徹な思想から、しずかちゃんの無償の看護と優しさに触れて葛藤するプロセスは圧巻というほかない。「なぜ敵の私を助けるの?」と問うリルルに、しずかちゃんが涙を浮かべて返した言葉は、作品全体の道徳的バックボーンを象徴している。他者の痛みを自分の痛みとして引き受けること。それはまさに知性の極致である。
歴史改変という重大な決断を下し、自らの存在消滅と引き換えに地球を救ったリルルの選択は、自己犠牲の崇高さと切なさを容赦なく観客に突きつける。夕暮れの光の中で消え去るリルルの微笑みは、何度観ても涙腺の決壊を免れない。