警察庁が公表する犯罪統計を分析すると、日本国内で発生する殺人事件全体の約半数近くが、配偶者や親子、親族間という当事者同士のあいだで起きていることが判明している。刑法犯全体の認知件数が推移するなかでも、身内間で生じる悲劇の割合は高い水準を維持し続けている。
法務省の犯罪白書や厚生労働省が収集する福祉関連の調査データを合わせて読み解くと、凶行に及ぶ加害者の心理的動機は極めて多層的だ。かつては突発的な激昂や金銭問題が主流と見なされがちであったが、現代では「誰にも頼れない孤立感」と「終わりの見えない疲弊」が複雑に絡み合っている。
追い詰められた末の選択——そこには、「相手を殺すか、自分が消えるか」という極限状態に追い込まれた認知の狭窄が存在する。愛着があるからこそ外部にSOSを出せず、家庭という閉ざされた空間で毒素が濃縮されていくのだ。