ナスカの地上絵の保存状態を語る上で欠かせないのが、世界でも類を見ない「極端な降水量の少なさ」です。なぜナスカ台地にはこれほど雨が降らないのか、客観的な気象データからその特異性を検証します。
南太平洋を北上する冷たいフンボルト海流(ペルー海流)の影響で沿岸部の空気は冷やされ、上空の温暖な空気との間に逆転層が生じるため、雨雲が極めて発達しにくい構造になっています。さらに東側には巨大なアンデス山脈がそびえ立ち、アマゾン流域から流れ込む湿った空気を完全に遮断(雨陰効果)します。その結果、ナスカ台地は世界で最も乾燥した地域のひとつとなっているのです。
データが雄弁に物語る通り、ナスカ台地の年間降水量は「事実上ゼロ」に近い環境です。加えて、朝晩のわずかな霧(カマンチャカと呼ばれる沿岸性の霧)に含まれる湿気が、露出した石膏質の土壌と反応し、地表を薄いセメントのように硬化させます。この「極度の乾燥×微小な湿気による自然硬化」の絶妙なサイクルが、2000年もの間、人為的な溝を強固に固定し続けてきたのです。